靖幸観察

私的観察

天才 expertiseとドレイファスモデル

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いつも 目の前に置いてある  あの本
「あの娘と、遅刻と、勉強と」


ぱらっと開いたら、このページだったので
改めて拝読



天才とは…
ギフテッド   gifted
だそうです



元々生まれ持った才能とかセンスとか、そりゃ多分にございますでしょ?特に芸術の分野や運動の分野は、やっぱり素質も大きいでしょう。
しかし、他の人以上に、傾倒したり専心したりしてるのも、事実だと思うんですよね。
しかも嫌々じゃなく、楽しんでるから 、どんどん成長して、ますます際立っていく天才バロメータ



「曲はいくらでも書ける」
と言っていたように、様々なアレンジしたり、提供したりするのはオチャノコサイサイなんでしょうが、なんでオチャノコサイサイなのかって聞かれても、その理由というのは本人にはわからないことが多いものです






今回は、真面目モードです。
長いよー。理論の説明だから(-ω-;)
ちょっと理論を使いますが、チェスのプレイヤーやパイロットが、どのように、その技術を習得していくのかを説いたドレイファスモデル(ドレイファス&ドレイファス:1970)というものがあります。



ドレイファスモデルでは、技術習得の段階を初学者(novice)から達人(expert)の 5段階に分けていますが、元々のcompetencyや才能は除外し、ある技術1つ1つに習得段階があると述べています。
つまり、音楽はexpertだとしても、料理は初学者とか、そういう考えです。



この理論では、ある技術が上達するには、最低10年の歳月が必要とされ、作曲、ギター、ピアノなどもその技術の中に含まれます。



しかも、ただ「やってる」だけでは4段階、5段階にはならず並大抵ではない努力が必要であることに加え、誰しもが4段階、5段階には到達することはなく、大多数がおおよそ3段階で留まると示しています。



つまり、あらゆる分野にベテランという方がいらしたとしても、その方の多くは3段階のレベルに留まっているわけで、さらに標準偏差の分布から考えると2段階のレベルの方が最多であることになります。



しかし、少しやっかいなのが、未熟な人が「実は自分はかなりのエキスパートだ」と思い込む「二次無能力」という現象があり、未熟でありながらそれに気づいていない方もいらっしゃることです。
井の中の蛙大海を知らずなのか、到達レベルを知らないからこその誤解なのかわかりませんが、ここら辺りの層は、指導されるとダメ出しと捉え、逆ギレしたりするので、結構めんどくさい
ナースの場合だいたい4〜6年目くらいが、最も生意気盛りな気がします。






この理論、20年弱前にパトリシア・ベナー先生が看護の世界にも適応し、看護師が、どのように技術習得していくのかという教育的示唆を与えてくださいました。



看護師の業務のスタートは、あらゆる技術習得から始まります。採血や点滴ルートキープ、薬剤作成などなど。新人だから、経験がないから下手…それは確かかも知れません。この手の技術は、年数を重ねた方の方が上手かも知れません。



しかし技術というのは、それだけではないのです。状況(コンテクスト)に応じて適切に変化させる力や、瞬時に判断する力、問題解決力、リーダーシップ、後輩指導などなどあらゆる事項があり、さらにストレスコーピングやリフレクションなど自分の内面と適切に向き合うことも、その力の1つと言えるでしょう。



これは理論からの推測になりますが、おそらく4段階、5段階レベルの力というのは、ただ単に技術を遂行するだけでなく、周囲の状況やコンテクストを汲み取りながら、柔軟に変化させていく(アレンジ)力なども含めているのかも知れません。






では、このわずかしか居ない5段階の方が、適切な指導者になるか?というと、どうやらそうでもありません。なぜなら、expertは自分のexpertiseはよくわからず、それを説明したり教えたりするのは非常に困難だと言われています。
その事例として、初学者でも行動ができるようにとマニュアルを作成しますが、expertはそのマニュアルに従うとoutcomeが低下する事が認められています。よって不思議なことに? 指導者には3段階レベルの方が合うようです。

 

もう1つ、レベルが上がって行くに従って、変化していく事項が幾つかあります。


その1
初学者は、あらゆる情報をやみくもに取るものの、その情報の点と点の結びが出来なかったり、全体像に目を向けなかったりという特徴がありますが、達人は自分の直感で見たり判断する事ができます。



その2
達人は、何かの事象に対して、パーツパーツの問題をつついてみたり、パーツパーツに気をとられる事なく、全体像から見た問題の主眼を察知し、特定の問題のみに焦点化して対処します。



その3
達人は、ある事象に対処する際、完全なる傍観者ではなく、自分の立ち位置を見極めつつ、自らもシステムの一部として関与する事ができます。






あの本の中で語られた「天才」の定義は、なんとなくうやむやになっている感も否めませんが
生まれつきの才能や能力、competencyとは別に、このexpertiseが位置付けられるのですが、実際には双方は大きく影響し合ってるものと思います。



靖幸の場合、プレイヤーとしての才能が素晴らしいのは周知の事実ですが、おそらくご本人も「なぜ素晴らしいことができちゃうのか」ということについては、説明しづらいかと思います。なぜならそれがexpertiseだからです。






ちなみに、看護の世界では、このexpertiseを研究的に明らかにしようという取り組みが、だいぶ前から行われています。私もその1人でした。
そのexpertiseがわかれば、次世代のナースの育成に役立つのではないか?というのが発端ではあったのですが…前述したように真似てるだけじゃ、最大でも3段階までしか登れず、ただ年数を重ねたベテランというところで終わってしまうのです。
…ということは、結局は本人のヤル気次第といっても良いかもしれませんね。

ほら、やっぱり、デンス・チャンス・ロメンスは自分次第だぜっというところに落ち着きました



ちなみに、ワタクシは、プレイングマネージャーが理想だったのですが、プレイヤーとマネージャーは、思考過程が違う(と思ってます)ので、なかなか難しかったです。時間管理的にも。







ベナー、ドレイファス、expertiseからhitしちゃった方ごめんなさいw